北 斗 星 臨 時 号

                 H15.12

               PKDの会事務局

 北斗星Vol13の発行が遅れて5月の講演会の報告が今回お届けできないことをお詫び申し上げます            

 今回はプログレス、新聞記事、「のうほう倶楽部」の掲示板の抜粋記事を同封いたします。

 

新聞記事

1)多発性嚢胞腎  腎動脈塞栓術が成果(読売新聞)  2003年9月23日

2)多発性嚢胞腎  肝臓にも嚢胞 6割超 (読売新聞) 2003年9月24日

3)多発性嚢胞腎  支え合う患者たち(読売新聞)   2003年9月25日

 

PKDFCJ(多発性嚢胞腎財団日本支部)のインターネット掲示板より、ネイチャー・メディスン電子板の掲載された「動物実験で嚢胞腎が消えた!」に関する山口太美雄先生の記事を抜粋いたしました。

一日も早く臨床でも有効であることが証明され、使用されることを祈るばかりです。

この記事掲載につきましては山口先生、のうほう倶楽部管理者の許可をいただきました。快くご許可くださいましたことに心より感謝いたします。

 

山口太美雄先生:カンザス大学でGrantham先生の下で研究担当助教授として、PKDに関する基礎研究に従事されています。

 

PKDFCJのインターネット掲示板「のうほう倶楽部」

  http://www1.ezbbs.net/16/eko-hodouchi/

 

 

 

 

PKD手帳の訂正

 以前(H15年11月以前)PKD手帳をご購入いただきました方にPKD手帳の訂正プリントを配布しております。

ご希望の方は事務局までご連絡ください。

 

 

 

 

377.「動物実験で、腎嚢胞が消えた!」ネイチャー・メディスン電子版より

 

名前:山口太美雄(カンザス大学医学部)    日付:9月29日(月) 3時3分

PKD研究の歴史に残る大きなニュースがとびこんできましたので、他の予定を変更して、急遽お伝えします。

 ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)電子版に、多発性嚢胞腎 (PKD) に対し、バソプレッシン受容体拮抗薬(大塚OPC31260)が非常に劇的に効いたとの報告が掲載されました。インディアナ大学(Gattone)とメイヨ・クリニック(Harris, Torresら)の共同研究です。

 二種類の異なる遺伝性のPKDモデル動物(ラットとマウス1系統ずつ)において、OPC31260を早期から投与した場合には腎嚢胞の発現が、実に「ほとんど消えた」と言っても過言ではなく、腎機能低下も見られなかったとのこと。また、比較的遅い時期から投与を開始した場合においても、嚢胞形成が明らかに抑制され、腎機能低下も著しく抑制されています。

 論文では、「OPC31260が臨床において有効である可能性が考えられ、臨床治験を考えるべきである」とはっきりと書かれています。

 この論文の著者自身も同じ事を書いていますが、私も15年間この病気の研究をやっていて、初めての「画期的な」報告です。Grantham氏からも「こんなに劇的な効果の論文は初めてであるが、理論的には信用に値するのではないか。」とコメントされています。この論文の元になった理論は、カンザス大学から提唱してきた「サイクリックAMPが腎嚢胞形成を促進する」というもので、バソプレッシンによる細胞内サイクリックAMP産生増加をOPC31260が抑制することによって腎嚢胞形成が止まったと考えられます。

 この結果はもれ聞いてはおりましたが、11月のアメリカ腎臓学会で公開されると噂されていました。今回、予想より早く「ネイチャー・メディスン」オンライン版に載ったので、ちょっと驚いた次第です(メッセージ364番参照)。
 
 ただし注意点として、

1.実験に使用したラットモデルは腎嚢胞のみならず肝嚢胞も発現するのですが、この薬剤による「肝嚢胞形成に対する抑制効果はみられなかった」ということ。

2.バソプレッシン受容体拮抗薬の副作用として、抗利尿作用を抑制する可能性があり、臨床に使用した場合「尿意を催す回数が増えることが考えられる」こと。

3.薬剤の使用容量と効果の相関などを探り、副作用の有無を検討するための試験に、今後まだ数年間を要すると考えられること。

 などがあります。しかし、今までのPKD研究のスローな歩みから一躍飛び出したのは、まぎれもない事実ではないかと思います。

 

419.関連情報「動物実験で、腎嚢胞が消えた!」ネイチャー・メディスン電子版

 

名前:山口太美雄(カンザス大学医学部)    日付:10月20日(月) 6時27分

 377番で紹介した記事の内容について、多くの方から大きな反響を頂きました。その出典に関する問い合わせも多数あり、電子版に続いてネイチャー・メディスン10月号に印刷されましたので、以下を御参照下さい。

(雑誌名、ページなど):Nature Medicine 9 (10):1323-1326.2003 October

(タイトル)Inhibition of renal cystic disease development and progression by a vasopressin V2 receptor antagonist.
(著者名)Gattone VH, Wang X, Harris PC, Torres VE.

(再度の内容紹介の御希望も沢山頂きました。そのため377番を再録します。)

377.「動物実験で、腎嚢胞が消えた!」ネイチャー・メディスン電子版より

名前:山口太美雄(カンザス大学医学部)
日付:9月29日(月) 3時3分
PKD研究の歴史に残る大きなニュースがとびこんできましたので、他の予定を変更して、急遽お伝えします。
 ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)電子版に、多発性嚢胞腎 (PKD) に対し、バソプレッシン受容体拮抗薬(大塚OPC31260)が非常に劇的に効いたとの報告が掲載されました。インディアナ大学(Gattone)とメイヨ・クリニック(Harris, Torresら)の共同研究です。
 二種類の異なる遺伝性のPKDモデル動物(ラットとマウス1系統ずつ)において、OPC31260を早期から投与した場合には腎嚢胞の発現が、実に「ほとんど消えた」と言っても過言ではなく、腎機能低下も見られなかったとのこと。また、比較的遅い時期から投与を開始した場合においても、嚢胞形成が明らかに抑制され、腎機能低下も著しく抑制されています。
 論文では、「OPC31260が臨床において有効である可能性が考えられ、臨床治験を考えるべきである」とはっきりと書かれています。
 この論文の著者自身も同じ事を書いていますが、私も15年間この病気の研究をやって「て、初めての「画期的な」報告です。Grantham氏からも「こんなに劇的な効果の論文は初めてであるが、理論的には信用に値するのではないか。」とコメントされています。この論文の元になった理論は、カンザス大学から提唱してきた「サイクリックAMPが腎嚢胞形成を促進する」というもので、バソプレッシンによる細胞内サイクリックAMP産生増加をOPC31260が抑制することによって腎嚢胞形成が止まったと考えられます。
 この結果はもれ聞いてはおりましたが、11月のアメリカ腎臓学会で公開されると噂されていました。今回、予想より早く「ネイチャー・メディスン」オンライン版に載ったので、ちょっと驚いた次第です(メッセージ364番参照)。
 
 ただし注意点として、
1.実験に使用したラットモデルは腎嚢胞のみならず肝嚢胞も発現するのですが、この薬剤による「肝嚢胞形成に対する抑制効果はみられなかった」ということ。
2.バソプレッシン受容体拮抗薬の副作用として、抗利尿作用を抑制する可能性があり、臨床に使用した場合「尿意を催す回数が増えることが考えられる」こと。
3.薬剤の使用容量と効果の相関などを探り、副作用の有無を検討するための試験に、今後まだ数年間を要すると考えられること。
 などがあります。しかし、今までのPKD研究のスローな歩みから一躍飛び出したのは、まぎれもない事実ではないかと思います。

 

428.バソプレッシンについて(多くのお問い合わせに対して)

 

名前:山口太美雄(カンザス大学医学部)    日付:11月4日(火) 1時0分

 377番、419


番で御紹介したネイチャー・メディスンの記事に対して、大変に数多くのお問い合わせを頂いています。

 中でも多い御質問は、なんとかこの薬(バソプレッシンV2受容体拮抗薬)が手に入らないだろうか? 何とかして使ってみたいけれど、方法はないだろうか? というものです。

 この
薬剤のPKDに対する効果は、現在のところまだ動物実験で証明している段階なので、現実にPKDの患者さんに今すぐに使用することはできません。その点は377番、419
番にも書かれていますので、よく御理解下さい。

 ただし一方で、先日ネイチャー・メディスンで紹介された研究の他のPKDモデル動物でも、バソプレッシンがPKDの悪化因子のひとつである可能性が考えられ、そこでもバソプレッシンV2受容体拮抗薬が有効であったとの情報があります。

 このように「バソプレッシンがPKDの悪化因子のひとつである」との理論がもしも本当に正しいと仮定すれば、たとえ薬を使わずとも、単純に体内のバソプレッシン分泌量を上げないようにすれば、PKDの進行がある程度は抑えられるかもしれません。

 バソプレッシンの分泌量はごく一般的には(病気のときや何か異常な状態におかれている以外の場合には)、「渇水状態では増加し」、「飲水すると減少」します。したがって、一番簡単にバソプレッシン分泌量を上げないようにするには、以下のような方法が考えられます。

1.日中から晩方にかけては水分摂取を心がけ、なるべく渇水状態(のどが渇いた状態)にならないようにする。

2.夜間、睡眠時間中は血中バソプレッシン濃度が高めになりがちなのでそれを防ぐために、就寝前に水を飲み、夜中に一度起きて水を飲むようにする。

 しかし、これら1,2の方法についてまず「十分に理解して頂きたいこと」は、

A.現時点ではこの方法がPKDの進行を抑えることは客観的かつ科学的には「証明されてはいない」こと。あくまでも動物実験の結果から「推察」される事柄であり、バソプレッシンV2受容体拮抗薬がまだ使えない現状で、それを「代用するひとつの方法」として考えられる「仮説」であるということ。

B.「水分摂取量が制限されている方」は、「絶対に実行しない」で下さい。

C.この方法を実行したい場合は、「必ず事前に主治医の先生によく相談し」、「勝手な思い込みや判断では絶対に開始しない」こと。

D.この方法は「腎機能が良好な段階では比較的安全」と言えますが、「腎機能になにか懸念が持たれる場合」には、「行うべきではない」、または「主治医と相談の上、慎重に行うべき」です。

 以上、沢山の御質問にお答えする意味で、御報告致しました。